看板がなければただの玄関。震災の想いを受け継ぐ、温かくて、小さな、絵本屋さん

三陸鉄道リアス線の吉浜駅から歩いて3分ほど。

のどかな農村風景を歩いていると、車道沿いに「日本一小っちゃな本屋さん」と書かれた控えめな立て札がぽつんと立っている。

しかし、そこから視線を上げても、どう見ても普通の民家しか見当たらない。

ガラス張りの洒落たファサードもなければ、ずらりと並ぶ書棚もない。

玄関先に「居マス」という手書きの可愛らしい札がかかっていれば、それがオープンの合図だ。

玄関をガラリと開けると、そこに並んでいる本はわずか数冊。

本屋というよりは、もはや「概念」に近い極小空間だが、この数冊が放つ熱量と密度が尋常ではない。

ここで取り扱っているのは、東日本大震災の教訓や、吉浜の地に伝わる津波の歴史を綴ったオリジナルの絵本だけなのだ。

代表的な一冊『吉浜のつなみ石』は、素朴で温かみのあるタッチで描かれた物語に英訳も添えられており、今や海を越えて訪れる人々の震災学習テキストとしても機能しているという。

売れ筋の新刊も、流行りのZINEもない。

ただ、この土地で絶対に忘れてはいけない記憶だけが、絵本という形にパッケージされて静かに手渡される。

巨大な流通システムからは完全に切り離された、極限までミニマルで純度の高い知の震源地。

大船渡を訪れたなら、この究極の「インディペンデント書店」の玄関をぜひ叩いてみてほしい。

(画像元:【おもてなし隊コラボ】日本一小っちゃな本屋 カドベッカ書店(#11)Youtube動画より抜粋)