仙台中心部から自転車で20分。わざわざ迷い込みたい、八幡町の「有機的な書庫」
杜の都・仙台。中心部の喧騒を背に、シェアサイクルで旧国道48号線を西へ走ること約20分。
八幡町の静かな住宅街にひっそりと佇む一軒の古い平屋が、今回紹介する「曲線」だ。
本を愛する業界人たちが仙台を訪れる際、必ずと言っていいほど立ち寄るという、知る人ぞ知るインディペンデント書店である。
石畳のアプローチを抜け、引き戸を開ける。するとそこには、外観の素朴さからは想像もつかないほど、異常な熱量を持った選書空間が広がっていた。
柱の歪みや建具の経年変化すら、空間の心地よいノイズになっている。

もしこの築数十年の古民家を3Dスキャンして点群データに落とし込んだら、きっととんでもなく美しく、有機的な構造が立ち上がるだろう。
そんな風に建物の骨格ごと愛でたくなるほどの、見事なリノベーションだ。
壁沿いの書棚と平積みのテーブルを埋め尽くすのは、詩や短歌、歴史、哲学などの人文系から、社会問題、そして分厚い写真集やアートブックまで。ベストセラーをただ並べただけの棚ではない。
一冊一冊が店主の明確な意図と美意識によって選ばれ、配置されていることがヒリヒリと伝わってくる。

それでいて、奥にはコーヒーを飲めるカウンターがあり、窓際には靴を脱いでくつろげる小上がりまであるという「抜け感」のバランスが心憎い。
仙台の中心部からは少し離れている。わざわざ自転車を漕ぐか、バスに乗らなければ辿り着けない。
しかし、この「移動」という物理的なコストすら、極上の選書と向き合うための美しい助走に思えてくる。
効率よく本を買いたいならクリック一つで済む。だが、空間のノイズごと未知の活字を浴びたいなら、この八幡町の迷宮へ意図的に迷い込むべきだ。
(画像元:北欧、暮らしの道具店「【本屋の本棚から】前編:「誰かと暮らす」を考える本4冊(仙台・曲線)」/ TOHOKU360 国道沿いの小さな看板が目印 仙台・八幡町の本屋「曲線」 より引用)