No. 01
About this Bookstore
この書店について
明治の小学生の落書き付き。熊野大社の参道に鎮座する、元・学校の「生きた化石」
山形県南陽市。平安時代から続く熊野大社へと向かう静かな参道に、その歴史のバトンを体現するような凄まじい物件がある。
歴史を感じさせる重々しい歪みを持ったガラス戸をガラリと開けると現れる「佐野書店」だ。
ここがただの「エモい老舗本屋」で片付けられない理由は、その建物の履歴書にある。

もともとは江戸時代まで修験道の寺院として機能しており、明治時代に入ると、なんとこの地域で初めての「学校」へと姿を変えたのだ。
現在も店主が寝泊まりしているという2階には、明治時代の小学生が壁に刻んだイタズラ書きがそのまま残されているというから恐れ入る。
昭和の終わりから平成にかけて地方を飲み込んだ大型スーパーやネット通販の波に対し、3代目の店主は地元書店同士でタッグを組むなど泥臭く抗い、今もこの歴史的な参道で新刊や雑誌を仕入れ続けている。
綺麗にリノベーションされた現代のブックカフェも心地よいが、江戸の寺院から明治の学校、そして令和の街の本屋へと、時代ごとの人々の「学びの場」として機能し続けてきたこの空間には、どんな優秀な建築家にもデザインできない圧倒的な時間軸の重力がある。
便利なネット上のサジェストから完全に逃れ、歪んだガラス越しに未知の一冊と目が合う体験。
山形を訪れたなら、この生きた化石のような空間の重い扉を、ぜひ自分の手で開けてみてほしい。
(画像元:ニッポン放送NEWS ONLINE 「まちの本屋さんを、何とか残したい! 熊野大社参道の由緒ある書店・三代目の強い思い」より引用)