東光書店
登録日:2026年04月14日
思考の地層を掘り起こす。上ノ橋町で静かに知を蓄え続ける硬派な空間
盛岡の街を流れる中津川。その上ノ橋のたもとに、まるで映画のセットのような凄みのある佇まいの古書店がある。
聞けば、1936年(昭和11年)の建築当時からずっとこの場所で街を見守り続けているという。
橋が落成した当時の古いモノクロ写真にも、すでにこの店の姿が写り込んでいるというから恐れ入る。
一歩足を踏み入れると、そこは静かで硬派な空間だ。
整然と並ぶ3列の書棚は、左から岩手の郷土資料、歴史書、美術系の大型本と、潔いまでにストイックな構成。
帳場(あえてそう呼びたい)の周りには、古い小岩井農場の紙モノや、額装された南部絵暦がさりげなく置かれており、郷土史や民俗学好きなら、この一角を眺めているだけであっという間に時間が溶けていくだろう。
この空間が放つ独特の重みは、その成り立ちにあるのかもしれない。
創業者は関東大震災を機に東京から盛岡へと戻り、この場所で書籍商を立ち上げた。明治期のジャーナリスト・横川省三とも縁が深く、店自体が盛岡の文化や歴史の「生き証人」としての役割を果たしてきたという。
新幹線「はやぶさ」に乗れば、東京から盛岡まではたったの2時間半。
圧倒的なスピードで移動できる現代だからこそ、ドア一枚隔てて昭和初期の時間がそのままパッケージされたようなこの空間が、たまらなく魅力的に映る。
東北の深い歴史にどっぷりとダイブしたいなら、ここは絶対に外せない街の思索空間だ。